緊急事態宣言下ではありますが、今回のコンサートでは、(1) 入場者を定員の1/4に制限し、(2) 入場者に検温と手指の消毒と、(3) 厚生労働省新型コロナ接触確認アプリ「Cocoa」の利用をお願いする形での安全対策を取り実施いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
【プログラム】
1. Thomas Marceau『Seascape』(約4分)
2. バルトーク『ルーマニア民俗舞曲』(約5分)
3. 平吉毅州『虹のリズム』(全25曲・約40分)
【プログラム・ノート】
Thomas Marceau『Seascape』
トーマス・マルソーの『Seascape (海景)』は雰囲気が変わり続けるマリンバ・ソロのための曲で、静寂と躍動の間を調性とリズムを頻繁に行き来することによって行き来します。このソロ曲は、楽器の端から端まで使う、長い流れるような音楽的フレーズを使っています。
バルトーク・ベラ『ルーマニア民俗舞曲』Sz.56
ルーマニア民俗舞曲(ルーマニアみんぞくぶきょく)Sz.56は、バルトーク・ベーラが1915年に作曲した6曲からなるピアノの小品の組曲である。当時ハンガリー王国の一部であったルーマニアの各地の民謡を題材にしたもの。バルトークのその他の編曲作品と同じように、独特な和声(とはいえ、耳にはなじみやすい)を用いており、民謡というありふれた素材に新たな生命が与えられている。技巧的な面もあると同時に、演奏においては楽譜には表記されていない民俗音楽的な情緒が求められ音楽的要求は高い。本日はこの曲を、ルーマニア、ハンガリーで広く使われる民俗楽器『ツィンバロン』でおとどけする。
1. 棒踊り(ルーマニア語:Jocul cu bâtă,ハンガリー語:Bot tánc,採譜地:Voiniceni)Allegro moderato イ調。
2. 帯踊り(ブラウル舞曲。ルーマニア語:Brâul,採譜地:Igriş)Allegro 二調。繰り返しの時、オクターブを加えて演奏するピアニストもいる。
3. 踏み踊り(ルーマニア語:Pe loc,ハンガリー語:Topogó,採譜地:Igriş)Andante ロ調
4. 角笛の踊り(ブチュム舞曲 ルーマニア語:Buciumeana,ハンガリー語:Bucsumí tánc,採譜地:Bucium)Moderato(一部の版ではMolto moderato) イ調。繰り返して演奏される事もある。
5. ルーマニア風ポルカ(ルーマニア語:Poarga Românească,ハンガリー語:Román polka,採譜地:Beiuş)Allegro ニ調。チェコの影響を感じさせるリズム的には面白い楽章。バルトークは8拍を一単位とする独特なポルカのフレーズを律儀に2拍子と3拍子の交替で記譜している。オリジナルは村の青年によるヴァイオリン演奏である。
6. 速い踊り(マルンツェル舞曲 ルーマニア語:Mărunţel,ハンガリー語:Aprózó,採譜地:Beiuş, Neagra)Allegro – Piu allegro(管弦楽版ではL’istesso tempo – Allegro vivace)イ調。別々の場所で採譜された、相互に関係のない二つの舞曲のメドレーであり、これと同じ構成は15のハンガリーの農民の歌にも見られる。
平吉毅州『虹のリズム』
『虹のリズム』は平吉毅州(1936-1998)が1977年から1979年にかけて子供のためのピアノ小曲集として作曲したものである。このアルバムではこれをマリンバで演奏し、その魅力を更に引き出している。トレモロでのクレッシェンド・ディミュニエンドを駆使した演奏を聞いていると、むしろもともとマリンバのための曲だったのではないかと思えるほどである。
全曲はさまざまなスタイルによる25の小品よりなる。1曲目の「タンポポがとんだ」こそ子供のための曲らしくとても可愛らしい感じだが、2曲めの「想い出」からは雰囲気がガラッと変わって、深い情感を湛えた音楽の地平が広がっている。8曲目の「踏まれた猫の逆襲」は「ねこふんじゃった」を知っていれば思わずくすっとするなかに、上質のブランデーを使った午後のケーキのような気品を感じるだろうし、折り返し地点にある13曲目「子守歌」は、母親が子供に注ぐ深い愛と情が溢れ出して一つのクライマックスを形成している。
その後曲集は、「ススキの葬列」を見送ったり、日本の冬の間は南米に渡って「潮風のサンバ」「夏の夜のハバネラ」(日本の冬は南米の夏だ)と過ごしたりして、春の日本に戻って「五月の風」を感じる。そして迎えるのが、後半のクライマックスの「夕映えの湖」(21曲目)だ。低音が表すゆったりとした湖の水面の揺れに、高音が表す夕日の反射がキラキラとたゆとうのが感じられるだろうか。
時は秋。「秋の光に落ち葉が舞って」では文字通りその光景が目の前に広がる。そして運動の秋にふさわしく、「はつかねずみの運動会」を見学し、「真夜中の火祭」を経由して、飛び立っていったタンポポで始まった本曲集の38分の旅は「チューリップのラインダンス」でフィナーレを迎える。
1 タンポポがとんだ The Dandelions are Flying
2 想い出 Memories
3 バレリーナの悲しみ The Ballerina’s Sorrow
4 錆びたブランコ The Rusty Swing
5 波のお話 The Waves’ Tale
6 ささぶねの航海 The Voyage of the Bamboo Boat
7 はるかなるアフリカ Distant Africa
8 踏まれた猫の逆襲 The Revenge of the Cat that was Stepped on
9 ふたりだけのお話 A Chat
10 奇妙な追いかけっこ The Curious Chases
11 蛙の散歩 The Frog Takes a Walk
12 ひとりぼっちのワルツ A Lonely Waltz
13 子守歌 Lullaby
14 海の伝説 The Legend of the Sea
15 あやつり人形の ひとり芝居 The Marionette Dances Alone
16 ススキの葬列 The Pampas Grass Funeral Procession
17 みつけられたいたずら The Mischief that was Found Out
18 潮風のサンバ The Sea Breeze Samba
19 夏の夜のハバネラ Summer Night Habanera
20 五月の風 The May Breeze
21 夕映えの湖 A Lake in the Rays of the Sunset
22 秋の光に落ち葉が舞って The Falling Leaves Dance in the Autumn Rays
23 はつかねずみの運動会 A Field day for White Mice
24 真夜中の火祭 The Midnight Fire Festival
25 チューリップのラインダンス A Line Dance of Tulips
崎村潤子 (Junko Sakimura)
国立音楽大学打楽器科卒業。マリンバを鈴木明子、草刈とも子、上野信一、岡田知之の各氏に師事。ツィンバロムを加納靖子氏に師事。 卒業後、1990年のリサイタルを皮切りに、ストラヴィンスキーの『きつね(日本語版)』、クルタークの『シュテファンの墓碑』『コンチェルタンテ』、コステロの『IL SONGO』の日本初演など、精力的に活動。2017年にはBSテレ東「音楽交差点」にもゲストとして出演。海外においては、スロバキアで開催された第3回世界ツィンバロム・コングレス(1995)に日本代表として参加、スロバキアテレビに出演、プラウダ紙等に取り上げられた他、英国、ドイツ、スイス、ハンガリー、カナダ、メキシコ、中国などで演奏を行い、好評を博している。 また、オーケストラとの共演は、小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラコンサート『デュティユー/瞬間の神秘』が、NHKで全国放映された他、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、名古屋フィルハーモニーほか主要な管弦楽団と共演してきている。
井原由加子 (Yukako Ihara)
国立音楽大学器楽学科打楽器専攻卒業。打楽器一般を齋藤美絵、岡田知之、植松透、新谷祥子、上野信一、百瀬和紀、マリンバを鈴木明子、高田直子の各氏に師事。 第1回日本ジュニア管打楽器コンクール第2位。 第19回日本管打楽器コンクール第4位。 第19回打楽器協会主催新人演奏会にて、新人賞受賞。 第1回南カリフォルニア マリンバコンペティション、セミファイナリスト。 2009年よりアメリカ、2014年よりイタリアでも演奏活動を展開中。 2012年に演奏者として参加した企画、ニコラ・セガッタ作曲の「セロ弾きのゴーシュ」の楽譜、CD付き絵本(イタリア語訳)が、Edizione ETSより出版中。 こぶしぶらす、アンサンブル デュ クルールのメンバー。 打楽器奏者としての活動の他、後進の指導も行っている。